久保田利伸の「THE BADDIST」CD レビュー

2010年03月11日

PVの先駆けとして、マイケル・ジャクソンのスリラーが話題になった頃、日本にも衝撃的なポップスターが現れた。文化放送のジングルで話題になり、裏方から見出された久保田利伸である。実は、日本のロックシーンの伝説となるX Japanと同時代なのである。

当時を振り返りGLAYのTAKUROは、あるテレビ番組で「最も興味のなかった音楽だった」と述べたが、当時の日本にはR&Bのマーケットこそが存在しないといわれていた。

もちろん美空ひばりをはじめとして音の要素としてそれを表現したボーカリストは存在しなかったわけではない。しかしX Japanより、その衝撃ははかり知れないものだったと評価されるべきで、おそらく彼がいなかったら、EXILEも存在しなかっただろう。妙な例えに聞こえるかもしれないが、ジャニーズでいえば、岡本健一が木村拓哉のオリジンだというのと同じである。

シングルジャケットは、ポール・マッカートニーのジャケットも手がけた写真家による。今聴いても、同じプロデューサーによる平井賢やCHEMISTRYを超える声量と心の琴線に触れる感動がある。

ポップにして彼のかもし出すグルーブは、当時としては日本人離れしたものだったし、それがすぐスティービー・ワンダーと同列にあると知らしめた。

そんな久保田利伸を語る上で決して看過出来ない初ベストアルバム。
オーディオに入れ、再生ボタンをクリックした瞬間、体全体から心の奥底まで、電流が走りっ放し。
体が動き出して止まらない。そんな作品。

1曲目の「TIMEシャワーに打たれて」は、これまでの日本人アーティストには無い、力強いゴスペル調のアカペラからスタート。
そして重みを増したドラムのリズムに、極上ラップ。サビでは心の底から力が湧いて来るようなSOULを感じさせる。
そんなパワーアップした曲から始まり、こってりしながらも後味の良い、懐かしい曲が続く。

最後はデザート代わりの、きれいでスッキリしたバラードで締める。強いて不満を言うなら、2曲目の「流星のサドル」で変声のためにキーの高さに苦しそう。ラストを元曲のように、高いキーで叫ぶように歌っていないところにクールダウン。
これが出来ていれば、至上最極の1枚であった。





Posted by 春清花 at 00:10